──やっぱり、私はいらないんだ…だから、お父様も……


マリンが承諾した後、シャーマは部屋を出て行った。


呆然としたマリンはフラッとして、よろけた。
椅子の縁につかまって体を支える。

その時、目の前にあった鏡が目に入った。

ちょうどベリルの騒動を思い出したマリンは鏡の呪文を唱えて見た。


『何か用か?』


その声を聞いて、マリンは少しうれしくなった。
自分にも答えてくれるものはあるのだと。
しかし、特に質問も考えていなかったマリンは適当にたずねて見ることにした。


『この世界で一番美しいのは誰なのかしら?』


鏡の中の青年はしばらく考えてから、口を開いてまくし立てた。


『世界というのは? この星全部か? この城の中か?
それともお前の知っている人のいる範囲か?


美しいという観点にしてもそうだ。

何が美しいんだ? 顔? 肌? 鼻? 髪の毛?
美しさなんて人それぞれ感性が違うからな。

そんな異なったものを判断することなんか、ただ鏡にゃ出来ねーよ』