マリンは部屋でベッドにもぐりこんで泣いていた。
父についていくと、書斎についた。

そこで突然、父に

『隣国の王子がお前を欲しいと言って来た。
どう思い、どう選ぼうがお前の自由だ。

しかし…これがどこの国かわかっていれば選択の余地がないことが、お前にもわかると思うがな』

一瞬、何のことかわからなかった。

その時、脳裏をよぎったのはナナイの話に出てきた外国人。

その騒動のとき、結局つかまったのはナナイとゴーシェの二人のみ。
他はうまく逃げ仰せ、現状を伝えたとしたら──

大変な騒動になるのは目に見えていた。

そして、その中心にいた自分も漏れなく巻き込まれることも。


「わかりました。お受けいたします」


マリンは下を見つめて言った。

その時、父の唇が満足そうにほくそ笑んだのをマリンは見逃しはしなかった。