「流れが止まったら、後はそこで腐って消えていくか、小さな衝撃で崩れるだけさ」

「そんな…それでもこの国はもってきたというのに?」

「なにをしようが無駄さ。結界が崩れ始めた今となってはな」


その言葉でリリ−は顔を上げた。
結界―小さなころから魔女として、いかなる理由があっても守り抜かねばならぬと教えられてきた代物。
しかし、その実態はよく知らされていない。


「結界の隙間から、他国の風が入り込み人々に妙な刺激を与えている。

国民が世界とは広く他国があると気づくのも時間の問題だ」

「そもそもどうしてこの国は鎖国をし、一切他国を受け入れないの?」

「その理由は集団の本能にある」


リリーは首を傾げた。


「人がある程度集まると絶対に争いが始まる。そうして世界に国が生まれ、王が生まれてきた。

争いは本能だ。どんな些細なことからも始まり、止まりはしない。
他人を悪とし、争いに疲弊したやつらが、作ったのがこの鎖国さ。

同じ考えのものだけが集まれば争いは起きないと思ったんだろうな」