そう、遠い記憶のはずなのに。 今目の前に其れがある。 マリンは逸る気持ちを押さえつけて、できるだけゆっくりと慎重に扉を開いた。 記憶のとおりの陽光、そして肘掛け椅子には── 「キャッハハハ!! 見てみてぇ! 本当にきたよこのお姫様!!」 マリンはいきなりの甲高い声にマリンは面食らった。 ──違う 我に帰ってマリンは気づいた。 部屋にやさしい暖かさなどない。 夜の冷たさに、灯りすらもついていない暗い部屋。 陽光が差し込む窓なんてない。 小さな明り取り程度の小窓のみ。