「怖がらなくてもいいのよ?」 マリンは手で耳を覆った。 いまや顔は青ざめ、取り戻したはずの手の体温はぐっと下がり冷え切っている。 ──嘘! 嘘よ! そんなこと… ──あの人が…お母様が、此処にいるなんて!! マリンは扉の前で立ちすくんだ。 何がなんだか分からない。 全てが真っ白になってしまった。 「どうしたの? さぁ、お入りなさいな」 もう、何でも良かった。 その声に導かれるままに扉に手を伸ばした。