ドアを開けて入ってきたのは、マリンの継母・リリー。
遠慮がちに言葉をつむぐリリーの胸にマリンは飛び込んだ。

「丁度通りかかったら何か大きな物音がしたから気になって───キャッ、こらマリン!」

いさめる言葉を口に出すものの、表情とまるで合っていない。

状況に困っているものの、その顔はマリンが自分の胸に飛び込んで来てくれたことを喜んでいるかのようだった。


「出て行って」

リリアはそれが自分に対して吐かれた言葉だと理解するのに少し時間がかかった。


「今すぐこの部屋から出て行って!
そしてしばらく私にその顔をみせないで!」


リリアは口を真一文字に結んで、足早にリリーが入ってきたそのドアから出て行った。


リリーはリリアの後姿と自分の胸で泣くマリンとを心配そうに見つめ、静かにマリンをなだめるに入っていった。