「ラッキーなんてところじゃないわ!」


──おまじないが効いてきたのね!


マリンは小さくガッツポーズをして、ナイフを掴んだ。
しかし、後ろ手で扱うナイフはそう上手くはいかなかった。

マリンの力ない手では出血とまでは行かなかったが、皮膚を傷つけるには十分。

久々にちゃんと腕に血が通い、指先がボッと熱くなる。
手についた傷にキスをして、己の体温を感じる。

自分の体なのに、いつも感じているものなのに。
なんだか、妙に落ち着いた。


「…大丈夫…」


小さくそうつぶやくとさっさと足の束縛を解き、体を少しほぐすとマリンは立ち上がって部屋を出た。