――よくもこの私をコケにっ…!


マリンはきつく拳を握りしめた。
こんなはずではなかった。


あの時メイドについてお色直しに広間を出て部屋に戻った。

――あら、なかなか準備がいいじゃない

テーブルに注いであった紅茶に目をとめた。
その紅茶を手に取り一口すする。

立ったまま飲むとリリアに怒られると思い出し、傍らのソファーに身を沈める。

一息入れてメイドが化粧直しに来ないことに苛立ちを見せる。


「ちょっと! 化粧まだなの?
私は今日の主役なのよ?」