十字架

「…どうですか?気分は良くなりましたか?」

「えぇ。大分良くなりましたよ…」


渡辺は秘書の視線になにか違和感のような空気を感じ、屋上から去ろうと入口へと体を向けた。


「あ、渡辺さん。」

ふと、秘書に声を掛けられ自然と体が秘書の方へ向いてしまった。

「渡辺さんって、私の名前はご存じでしたっけ?」