「…おせー」

「すみません~…」


仕方ないじゃんっ。

まったくもう……。


微かに頬を膨らませて、フェンスにもたれかかる先輩に歩み寄った。


「なにがいいのか分からなかったんですけど…」


「なんでもいい」


あ…そう。それはよかったわ…。

じゃ文句言わないでくださいね。


「じゃー…あの、これ」


両手に抱えたパンを差し出した。

それを数秒黙って見つめた後、クロワッサンを指差す先輩。


「あ…はい」


…ってそれだけ!?

こんなに買ってきちゃったのに…。

あたしめろんぱんしか食べらんないよ。


「ん」


「え?」


どうしようかと考えていると、先輩が、早くもクロワッサンをかじりながら手を差し出してきた。

なにがなんだか分からずに、その手と先輩の顔を交互に見比べる。


「早く取れ馬鹿」


「ば……」


馬鹿って!と叫びかけて、右手に無理やり握らされたものを見る。


「……?」