俺様狼と子猫少女の秘密の時間①


――龍樹サイド――


「出かける」


顔も見ずに千絵に告げ、コートを着込んで外へ出た。


こっちに来てから一度も……外へ出ていない。

寒いからというせいもあるが、まあ単に面倒だっただけだけど。


だけど……今日は別だ。

今日は立夏の……命日だ。


母親が死ぬまでこっちに住んでいたため、ガキの頃よく立夏と行っていた場所……いわゆる思い出の場所というものがこちらにある。

墓へは行かない代わりに、毎年そこへ行っていた。


「…さみ」


まだ十一月だっつーのに…なんだよ。

冬本番がきたらどーすんだ。


今歩いている道。

この道も……よく二人で走っていた。


たぶん俺が小学校に上がって少しした頃までは、いつも立夏の後ろにくっついていた。




『龍樹! そんなの持って走ったら転んじゃうよー?』



俺を振り返って笑いながら言った立夏。

その直後に…言った本人が転んだんだったっけか。



毎年この日になると。

あの場所へ向かうたびに。

立夏を思い出すたびに。

俺は…心穏やかではいられなかった。