俺様狼と子猫少女の秘密の時間①


――悠由サイド――


「先輩のばかぁ…」


引っ張られたほっぺたを撫でながら、教室にとぼとぼ向かう。

痛いし…遅れるかと思ったし…。


「もう」


「おんや~? 今日はえらく遅かったのねえ♪」


「杏子」


席に着くと、杏子がニマニマしながらやってきた。


「顔がなんかこう……ものすごいよ」


「うっさいわ!」


あはは…。


迫ってくる杏子をかわすために、胸の前でお手上げのポーズをしてみせた。

根掘り葉掘り聞かれるかと思ったけど、運よくすぐにチャイムが鳴り…渋々杏子は自分の席に戻った。


「……」


なんか…いいよねぇ。

こういういつも通りって。


昨日まで同じ時間でも泣いてたなんて思えない。

やっぱり杏子の言うとおりだったな。


頬杖をつき、窓の外を眺め……緩やかに流れる時を感じた。