俺様狼と子猫少女の秘密の時間①


針を刺したような痛みが、体の内部を駆け抜ける。

それをごまかすように、もどかしさを打ち消すように、握った左手で壁を叩きつけた。




「なんなんだよあいつ……」


紛らわしい態度とりやがって。

ついさっきまで…甘い声で鳴いてたくせに…。


俯いたとき、悠由の落としたパンが目に入った。


「……」


それを拾い上げ、食べかけの甘そうな何かよく分からないものを口にしてみる。


「…こんなもんなにがよくてわざわざ食うんだよ…」


呟いて、大きくため息を吐いた。



『あたしじゃなくたって』…か。


……馬鹿が。

俺は…お前じゃなきゃだめなんだよ。

お前じゃ、なきゃ……。


悠由の、『あたしじゃなくたって』『雲の上の存在』という二つの言葉がグルグルと頭の中を回り続ける。


「あー…くそ」


ガシガシッと頭を掻き、教室に鞄を取りに戻った。


「あれ。どうしたの篠原。……彼女に振られでもした?」


そこでまた会った中井に半ば図星をつかれ、さらに苛立ったまま家路についた。