まるで聞く耳を持たない感じ。


アタシの言葉はいっさい彼には届かない。


『あのっ』


「迷惑だから消えてくれないかな。」


言葉を発したかと思えば、なんて冷たい言葉。


この人が本当にアタシを助けてくれた人なのかな…。


アタシはチラッと左手に目を向けると、治りかけのかさぶたを見つけた。


やっぱり、あの時の人は、この人なんだ。


『アタシ、貴方のおかげで車にひかれずにすんだんです

 だから、恩返しがしたくて』


「俺は、あんたみたいなヒト助けたことないから」


『あつ、それは…覚えてなくて当然なんで!』




この姿だから、きっと誰も気づくはずがない。


だから覚えてなくて当然だ。