「おい、聖、見てみろよ」
洗濯物を取り込んでいると、自分の部屋で作業中の筈の先輩(五十嵐蓮夜)が興奮した声で僕を呼んだ。
「どうしたんですか?…先輩?」
急ぎ足で部屋に向かうと先輩はキラキラした顔でこちらを見つめていた。
(また何か見つけたのか?…っていうか)
「先輩、仕事はどうしたんですか?」
「休憩だよ、休憩wwそれよりほら、これ」
先輩は嬉しそうにパソコンを指差した。
画面に映し出されていたのは先輩には珍しく小説のようだ。
「小説…ですか?」
「おう。
アンソロジー小説だよ」
「はい?」
得意そうに言う先輩
ついて行けない僕を無視して更に続ける。
「なんか、久々にサイト見てたらupしてあってさ〜
読んでみたらこれがまた切なくて、いい話なんだよ
それでな、この人に感想コメントしたら、お礼の返事が帰ってきちゃってさ
イイ人だよなww
俺もなんか小説書きたくなって来ちゃったよ…マンガやめて小説に変更しようK…」
「ストップ、ストップです先輩」
放っておくと何時間でも話し続けそうな先輩を制止して、僕はパソコンを閉じた。
パソコンは自動で電源が切れてしまった。
「あ〜何すんだよ、聖」
「す、すみません」
明らかに怒った声で僕を上目遣いで見つめる先輩。
元から整った顔立ちに見た目よりガッチリした体。
頭も良く、髪は軽く天然の入った茶色で
目は大きめで、捨てられる直前の子犬のような……
(いや、ダメだ。
惑わされるな、僕)
「…そんな目で見てもダメです」
僕は許してしまいそうな自分を抑えて、出来る限り先輩を睨んでみた
「ちっ…」
眼鏡をかけての睨みは先輩にはあまり効果が無い。
案の定舌打ちで返されてしまった。
「なんでもいいから…原稿あげてください」
先輩は顔をしかめた。