「今日はちょっと混んでたの。他のバイトの子も休んでたし。」

次にくる質問に答えられないように急いでラーメンをかきこむ。母さんは立ちあがってキッチンに入ってきた。

「どうしてそんなにバイトやりたがるのか、分からないわ。お小遣いならじゅうぶんすぎるほどあげてるじゃない。」

そういいながら冷蔵庫からビールをとりだして、カウンターに寄りかかった母さんは本当に不思議そうな顔をしていた。
みんなから逃げるためだよ、なんて馬鹿正直に言えるはずもなく、いつもの半分ウソを吐く。

「社会勉強だよ、母さん。先生がいい経験になるって。」
「ふ~ん、そう。」

自分で聞いてきたくせに、興味さなそうな返事をする。腹立つわぁ、このババア。しばらくしてラーメンを食べ終わった私は沈黙に耐えきれなくなり、キッチンをでた。

「じゃ、おやすみ」

母さんの鋭い"気にいらない"っていう感じの視線を背中に感じながら、カバンを掴んで階段をあがり、自分の部屋に入った。鍵をかけて、やっと安心した私は、ドアを背に、ズルズルと床に座りこむ。カバンを抱えたまま、自分の大きなへやを見わたす。
映画に出てくるようなプリンセスっぽいベッドにはふわふわの枕がたくさん。オーダーメイドの高級タンスに、お揃いの勉強机。わざわざ外国からもちよせた高級カーペットは、ふわふわで気持ちいいって南たちが言ってたけど、私には暑苦しいゆり他ではない。本棚には高い値段の参考書がずらりならんでいて、所々本が一冊、アルバム一冊、って感じで散らばってる。

それらを眺めて、考える。











私は、別にこんなの、欲しくなかったけどな...