「今日から恋人だからな。」
「恋人……。」
ぽつりと呟いた中野の言葉に、瀬沼桃の眼がキラリと輝いた。
「……。そろそろ学校に戻らないとまずいな。一度学校に向かうから、お前は車の中で隠れていろ。」
「……ウン。」
中野は名残惜しげに瀬沼桃を離し、シートベルトをさせた。間もなく二人が乗っている車が走り出した。
「先生。」
「何だ?」
「先生の下の名前、何て言うの?」
「……。」
淡々と尋ねる瀬沼桃に、中野は溜め息を吐いた。
「……俺はお前の名前、ちゃんと知っているのになあ。」
「だって、先生は生徒名簿があるから分かるでしょう?私の名前、分かる?」
「桃だろ。お前。瀬沼桃。」
不意に中野が名前を呼んだせいで、瀬沼桃は恥ずかしくて堪らなくなった。
教師と生徒ではなく、もう恋人同士なのだという事実にようやく実感が沸いた。
「先生の名前は?」
恥ずかしさを隠すように、慌てて瀬沼桃が聞いた。

