暫くして、中野の車は三戸という男の自宅まで到着した。どうやら瀬沼桃の自宅から、あまり離れていない場所にあるようだ。
よく考えてみれば、瀬沼桃が自転車に乗っていたことからも、意味が繋がったように思えた。
少し身構えて、中野は「三戸」という表札がある家の前に立った。
深呼吸をして、インターホンを鳴らす。
間もなく、電話の声の主と同じ、三戸らしき男が部屋から出てきた。
「はい。あ、中野先生ですか?」
「そうです。すみません、迷惑をかけてしまったようで……。」
「いやあ、平気ですよ。とりあえず中へどうぞ。女の子もいるので。」
頭を下げて中野は靴を脱いだ。部屋の奥へ進んでゆく三戸に、慌ててついていく。
正直なところ、見た目の割りには、しゃんと話す男だなと思った。
見た目と言えば、今時の明るい茶髪で、眉は整えられていた。ピアスホールがいくつが窺える。
「桃ちゃん、先生来たよ。」
「あ、」
「……瀬沼。」
中野は部屋に入ってきたものの、何と声をかければ良いか判らなかった。
膝に大きなガーゼを貼った瀬沼桃が、こちらを見ていた。

