未提出課題

 

思いがけない再会を喜び、今度一杯やろうと、竹永が連絡先を記した名刺を出した。それを中野に手渡す。慌てて中野もポケットから名刺を取り出した。
 

 
「暇なのでいつでも連絡くださいね、待ってます。」
 

「ああ、ぜひ。それじゃあ、用事もあるからそろそろ帰るよ。」
 

「はい。あ、送ります。」
 

 
立ち上がった竹永に釣られ、中野も立ち上がって職員室を出た。
それから中野は、正門まで竹永を見送ってから別れた。
 

 
「……。」
 

 
教師になろうと思った理由がここにある。竹永に会えて本当に良かった、と中野は幾度となく思うのだった。
 

それからハッとして、時間を確かめた。腕時計を覗くと、もうそろそろ6時半になろうとしている。
まずいと思い、中野は瀬沼桃がいるはずの理科準備室へと向かった。