「生まれてきてくれて……ありがとうございます」


あなたの存在がなければ、私はきっとこの人生が終わっていたんじゃないかと思う。


それは、智くんに助けてもらった駅のホームのときか、
それとも全く別の場所でだったかもしれない。

とにかく、智くんと会う前の私は自分というものが分からなくて。

分かりたいのに、一人で考えても答えは出ないし、泣けないことにコンプレックスがどんどん募っていった。

自分という人間を何より信用できなかった。


どんな感情になれば、泣けたのか。
昔はどうやって泣いていたのか。

大切なおじいちゃんが亡くなっても泣けないと分かったときは、本当に自分を嫌悪した。

薄情で、軽蔑した。