「智くん!!」


大声で呼びかけた私に、智くんはその場から動くことなく手を伸ばした。

私は真っ直ぐと吸い込まれるようにその腕の中に飛び込んで、そんな私を智くんは抱きとめる。


背中と腰のあたりに巻かれた腕が優しく撫でてくれる。


「ようやく帰ってきたな」

どこかの不良娘に言うようなセリフで私を迎え入れてくれた。


胸の中で必死に掴む智くんのシャツはまださっきと同じ、ワイシャツだった。

私がお姉ちゃんを追いかけてから、部屋に戻らずそのままここに居てくれたのかもしれない。


「智くん……」

「ん?」

「お誕生日、おめでとうございます」

「ああ」


時刻は0時15分。

土曜日の今日は、ーー智くんの誕生日。