お姉ちゃんがタクシーに乗って去っていったあともしばらくその場を動けずにいた。


色々と驚きすぎて、頭が整理できなかった。

お姉ちゃんが、私を羨ましいと思っていたなんて。

ぼんやりと、さっき聞いた言葉をまだ反芻していると、服のポケットに入れていたスマホが振動した。


……あ。

『いつになったら戻ってくるんだ?』

珍しく、私が喋る前に智くんが先に伝えてくる。


私はそれに返事をしたのか、していないのか。

自分でもよく分からないまま走り出していた。



ものの数十秒で、さっきまでいたホテルのエントランスが見えてきて、
その壁に寄りかかるように大好きな人の姿があった。