「じゃあ……!」

「いいです、って……言えない」


お姉ちゃんをまっすぐに見る。

昔から変わらない、さらさらと真っ直ぐな漆黒の髪。

私とお姉ちゃんは何もかも違う。

勉強の出来も、髪の質も、性格も。


……なのに、好きになる人だけは似ていた。


同じ人を好きになるのも、その人がお姉ちゃんを選ぶことも諦めていた。


だけど。


「どうしても、どうしてもっ」


智くんの指が私の頬をかすめた。

視線をお姉ちゃんから目の前の智くんに移す。


「この人だけは……ダメなんです」