「桜庭さんは別にどうでもいいけどさ、天音のお姉さんは厄介だよね」


咲ちゃんは直接お姉ちゃんと話したことは一度しかないけど、その時の私への態度にすっかりお姉ちゃんのことを嫌いになっているらしい。

私のいる手前、大っぴらに嫌ってる感じはないけど言葉の端々に毒を混ぜる。


「まあ、お姉ちゃんは今週出張で東京にはいないみたいで、今はいいんですけど……」

ふだんはお姉ちゃんからの用事があるときしか私たちは連絡を取らないし、
お姉ちゃんが実家に帰ってきたときくらいしか顔を合わせるタイミングはない。


けど、プライドの高いお姉ちゃんが私にわざわざ聞いてくるくらい、智くんと私の関係が気になっているらしかった。

出会いのきっかけや付き合うまでの経緯が、気になるのかも知れない。

あんまり、話したくはないなぁ〜。


そもそもお姉ちゃんは私が引け目を感じて距離を作ってることを知らないんじゃないかと思う。

今までの人生で、羨望と好意を一身に受けて育ってきてるから、きっと私の抱く感情は理解できない。