あのときの私は先輩を取られてしまうことよりも、お姉ちゃんからの印象のほうが気になって、どうすることも出来なかった。

いや、しなかったんです。


今思えば、先輩のこともそれほど知らなかったし、気にはなっていたけど、好きではなかった。

取られることを恐れ、
離れることを嫌い、
どんなときでも側にいたくなる。

……こんな熱い感情はなかった。


お互いの身体の隙間を埋めるように、智くんにさらにしがみつく。



「私が智くんのものなら」


あなただけなんです。

こんな感情、今まで知らなかった。


「智くんは私のものです」


この人だけは、絶対になくしたくない。


「当たり前だろ」

と軽く、何でもないように智くんが返すから。





ーーーー私は初めて姉と向かい合う勇気がわいたんです。