「お、お待たせしました!遅くなってごめんなさい!」


駅近くの最近できた大きな複合施設の前。
入ってすぐの広くとられたエントランスは5階まで吹き抜けてあって、天井に幾何学的な形のオブジェが吊るされている。

完全に遅刻している時間だというのに全然急ぐ様子を見せない智くんを引っ張って、姫乃ちゃんとの待ち合わせにようやく到着した。


「天音ちゃん〜!」

姫乃ちゃんは私を見てにこっと可愛らしく微笑んだあと、私の後ろに立つ智くんに視線を移して、

「こ、こ、こんにちはぁ!」

目をキラキラと輝かせて、勢いよく頭を下げた。


「あの……、姫乃ちゃんは一度会っていると思うんですけど、一応」

と私は後ろの智くんを振り返り「こちら、諏訪 智仁さんです」私の、彼氏の……とは声が小さくてほとんど聞こえていないと思う。

は、恥ずかしすぎますっ!
智くんをお友だちに紹介出来るのは嬉しいのですが、か、か、か、彼氏なんてほんとに言ってしまっていいのか!

私服姿の智くんは、洗練された清潔感を保つ大人の男の人で。今日もとてつもなく美しい顔を街行く人が振り返っていた。