美夜……








名前を聞いただけでズキズキと心が痛み、軋む。


俺ははじめて美夜に拒絶されたときからずっと距離を置いていた。


それも聖斗に慰められていたときも。

俺はそばにいてやれなかった。

なんで泣いていたのか
後から聖斗に聞いたけど


『教えて欲しかったらちゃんと思い出したら?』


そんなことを言われてしまう始末。


なんだよ。
ちゃんと思い出したらって…


俺は…


なにを思い出したらいいんだよ。


一体。
なにを忘れてしまったのかも
今ではとても曖昧で


自分の心の中がぐちゃぐちゃで
どうしたらいいのかわからない。



俺は一体どうしたい?

どうしたら美夜は俺を信じてくれる?

どうしたら美夜は俺を好きになる?

俺を見てくれる?



どうしたら………














「悠雅!」














頭の中が美夜でいっぱいになりかけていた

そんなとき

誰かが俺の名前を呼ぶ。





俺は声のした方に視線を送るが
すぐに俺の顔を強張った。



「小麻里……」


にっこりと微笑んで俺に手をヒラヒラと振っている小麻里がいた。


「悠雅、遅いじゃん。髪の毛もボサボサだし…寝坊?」


そう言って俺の腕に自分の腕を絡めて異様に引っ付いてくる小麻里。


前までの俺だったらこんなのなにも思わなかった。
むしろ、誘っていると思ってこのままどこかに行って
キスしてそれから、それ以上のことだってやっていたと思う。


だけど今は違う。


ただただ、嫌な気分にさせられる。