「小麻里って……今、あいつのことは関係ないだろ?」


そうだ。そのはずだ。

だって、小麻里は
俺なんか眼中にない。


それどころか、美夜のことを
傷つけようとしてて


それにあいつは、俺よりも
俺の弟の聖斗のことが好きなはずで………


俺とあいつは…
形だけの付き合いみたいなもので………



そこで俺は、ハッとした。


形だけの付き合いでも
美夜にとっては俺と小麻里は彼氏と彼女なんだと。


「美夜、あの、俺と小麻里は……」


俺は慌てて美夜に理由を話そうとする。


そしてとっさに
美夜の肩を触れようと手を伸ばした。


だけど…



「さ、触らないでっ!」


美夜が

俺の手を払いのける。


俺に触れられるこたさえも



嫌がられてしまう。


行き場を失ってしまって手を
俺はどうしたらいいかわからない。




「どんな言い訳聞いたって…
もう、信じられないよ…悠雅のこと」



「美、夜」


そんな、


そんなこと、言わないで?

そんな悲しいこと言わないで?


そんな辛そうな顔しないで?




「小麻里ちゃんを……ちゃんと大切にしなきゃダメだよ……?」





美夜の震える声が耳に響く。


痛いぐらいに

何もかもをえぐりとって

俺の心には何も残らない。



目の前が真っ暗になる数秒前……



美夜は誤魔化すようににっこりと、微笑むと



家の中に消えていった。