「……」



何も言わないあたしに呆れたのか
光太が軽くため息を吐いた。



「てる先輩、俺、先に帰るって
先生に伝えてもらってもいいですか?」


「あ、え、は、はい」



そう言って
てるちゃんが先生がいる方に走っていく
足音が聞こえる。


なんでかな?



今、あたし……変に冷静だ。





















「行くぞ」



優しい声で

光太があたしの背中を押してくれる。


重たい足を一歩一歩動かし始める。



そしてあたしは
歩きながらも悠雅と小麻里ちゃんの方を見た。







見たのはほんの一瞬。






「あ……」



思わず


声がでちゃったよ。







チラリと悠雅と小麻里ちゃんの方を見たとき

一瞬悠雅と目があった気がする。



そして

悠雅と目があった瞬間




ぎゅっと


悠雅が小麻里ちゃんのことを
抱きしめた。



その光景が


なんでかな?



とても愛おしい人を

抱きしめるときみたいに見えてしまった。