「小麻里、お前無理してる」
「し、してない」
小麻里の体が
びくりと跳ねた。
ああ、やっぱり
自分に嘘をついている。
嘘を付いたりすると
体をびくりと揺らす癖。
「嘘つくな」
「嘘、なんかついてない…」
「それも嘘」
そう言って俺は小麻里に手を伸ばす。
バチン。
い、痛い。
また小麻里に拒まれてしまった。
俺は小麻里に払い除けられた自分の手の甲を
優しく撫でる。
「あたしの気持ちなんて……
先輩にはわからない。
好きな人に嫌われて
好きな人に好きな人が出来て
でもその好きな女の子にいいように使われて
挙句の果てに
その女の子は聖斗を捨てて
聖斗を悲しませて
聖斗を泣かせて……
好きな人に幸せになって欲しい。
そんなあたしの些細な願いを
叶えたい。
そんな気持ち。
先輩みたいな自分勝手な人にはわかりません」

