「しっ!声でかい」


そう言ってあたしを驚かせた人は
あたしの唇を大きくて温かい手で包み込んだ。


その行為と同時に
演技の練習をしているみんなからは見えない死角にあたしのことを連れ込む。


そして、誰もいないことを確認すると
大きなため息と一緒にあたしの唇から手を離した。


「で、なんでこんな所にいるわけ?」


そう言って呆れ顔であたしのことを見下ろしてくるこの男。


「ちょ、ちょっと…覗きにきただけ……。
聖斗だってこんな所で何してるのよ」


小さい声で呟くように言った声は
聖斗にはよく聞こえなかったみたいで
聖斗は軽く首を傾げた後、


演劇練習をしている人たちのことをソッと覗き見た。


すると、怪しい笑みをニッと浮かべて
あたしのことを見る。


「わかった。美夜、お前………
悠雅のこと見にきたんだろ?」


にやにやとあたしをからかうみたいに
悠雅のこと指差している聖斗。


なんか、むかつく。


昔は可愛かったのに。



なんて考えながらも
笑う聖斗から視線を逸らして
ちょっと拗ねた真似をする。



「悪い?」


唇を尖らせて
ちょっと頬を膨らませて
わざとらしく拗ねたみた。


「おいおい、ブスがブサイクになるから
その顔はやめとけ」


聖斗はため息混じりにそう言うと
あたしの頬をガシッと掴んで
無理矢理あたしの顔を自分の方に向けさせた。



な、なんと言うバカ力…………