俺は転校することになったんだ。


小学生にはよくわからない
親の都合で。


みんな、俺がいなくなるのをすごく悲しがっていた。


だって俺はクラスの中心的存在だったから。


みんなが口々に言う。


『行かないで』

『会えなくなるなんて嫌だ』


そんなことをみんな
目をうるうるさせながら言ってる。


俺が一番悲しくて
転校なんてしたくないのに。


なんで、こいつらが泣いちゃうわけ?


そんなことを思いながらも
泣いてくれるみんなを見て、俺も泣きそうになっていた。



でも、ただ一人


泣いていない女の子がいた。


きっと俺はそのこの事が好きだったんだと思う。


だから、泣いていないのが不思議で仕方なかったから
俺は学校の帰り際にその女の子を呼び止める。



『俺、明日からいないからな』


みんなが知っていることをその子に言う。


俺の夢では相変わらず、その子の顔には
モザイクみたいなもやがかかっていて
顔がはっきり見えない。


でもその子はにっこり笑っているんだと思う。


『そうだね』


その素っ気ない言葉に俺の心がちくりと痛む。


『明日から会えないんだぞ!?』


『うん、そうだね』


まだ、素っ気ない。その言葉。


なんで、そんなに、どうでもいいみたいな言い方するわけ?


もっと、行かないでとか嫌だとか


そうゆうことは言ってくれないの?


夢の中の幼い俺は女の子を睨みつける。


『寂しいとか、言ってみろよ!』


女の子に寂しがってほしかった。


行かないでって言ってほしかった。


俺と同じ気持ちでいてほしかった。


でも、女の子は俺に向かって小さくため息を吐いた。


『寂しい………かな』


ひきつったその顔。


見たくなかった。


そんなに、俺のこと嫌いだったんだって

俺はそう思った。