『星野君』
もっと、もっと呼んでほしい。
思い出せそうなんだ、美夜のこと。
無くした記憶がもうすぐそこまで出てるんだ。
美夜………。
俺はただ閉じていたまぶたに力を入れる。
そのとき…………
『聖………………斗………』
頭の中で美夜が聖斗の名前を呼んだ。
俺はまた驚き瞼を開ける。
「なんだ………今の」
愛おしそうに聖斗の名前を呼ぶ美夜の声。
あの声はまるで………
そう、あれは……………
美夜と聖斗が………
そう考えたとき、俺の頭に鈍い痛みがこみ上げてくる。
その痛みは徐々に強さを増していき
ついには誰かに殴られているみたいな痛みになる。
「………………っ」
それはその痛みに耐えながらベッドへと寝転び
また美夜のことを考える。
そうだ。
そうだ、そういえば
聖斗も俺と同じ苗字なんだ。
あの声は俺のことを呼んでいるんじゃない。
聖斗のことを呼んでいたんだ。
そう考えただけで
ショックで胸が痛み頭に響く痛みよりも胸の痛みの方が大きくなる。
痛い、痛い、痛い…………。
息苦しい。
俺は自分の胸に手を当てて服を鷲掴み痛みに耐える。
流れる涙の量が増えて視界がぼやけてきた。
美夜。
俺はどうやら
美夜のことがどうしようもないぐらい好きみたいだ。

