あ、れ?
なんだ、さっきの声。
幻聴?
俺は驚きのあまり自分の部屋をキョロキョロと見渡して小さくため息を吐いた。
なんだ、さっきの美夜の声。
どうして聞こえたんだろう。
っとゆうかなんで苗字?
確か美夜は俺のこと名前で呼んでいたような気がする。
悠雅って…………
じゃあ、なんで苗字で呼ぶ美夜の声がした?
俺はバカな頭を必死で動かして考える。
でも思い出すのは俺のことを名前で呼ぶ美夜だけ。
美夜には苗字で呼ばれたことないはずなんだけど…………
どうしてだろう。
目を閉じれば聞こえてくる
美夜が俺のことを苗字で呼ぶ声。
なんでだろうか。
とても……懐かしい気がする。
不安そうに俺を呼んで
今にも泣いてしまいそうな美夜の顔が浮かんで
それでもどんなに意地悪をしても俺に付いて来る美夜が瞼の裏に見えて………
そんな美夜が
とてもとても愛おしい。
懐かしい。
この気持ちはいったいなんだ?
なんで、こんなに懐かしくて
なんで、こんなに悲しくて
なんで、こんなに涙が流れてくるんだろうか。
静かに俺の頬を伝う涙。
俺の瞳から止まることなく流れてくる涙と一緒に美夜のことを思い出す。
美夜
美夜
美夜
この瞼を開ければ
美夜は居なくなってしまうみたいで
俺は自分の目を開くことが出来ない。
それに
ずっと、こうしていれば美夜のことを思い出せるような気がするんだ。

