俺はその小さなつぶやきを聞き逃さなかった。
そして勝手に俺の体は動いていて
立ち去ろうとする聖斗の腕をガシッと掴む。
「お前………美夜と仲良かったか?」
そんなの俺、知らないぞ?
何故か勝手に焦りだしている俺の心を読みとったのか聖斗は目を丸くしながら俺を見る。
でもすぐにいつもの俺を馬鹿にしているような表情に戻った。
「何言ってんの?」
その冷ややかな言葉が俺の心を余計焦らせる。
何言ってんのって何?
どうゆうことだ?
「だから、お前……美夜と仲良かったのかよ」
心が焦っているせいで
少しきつめな口調になってしまった。
でも聖斗は俺のその口調が気にくわなかったらしく、俺のことを鋭い目つきで睨みつけると俺の手を払いのけてきた。
「仲良かったとか何それ?
兄さん、まだ思い出してないの?」
ため息混じりに吐き捨てるように言われた言葉。
振り払われた手の痛さなんて感じさせなくする。
こいつは、俺が思い出してないことを知ってる。
俺はこいつと美夜はほとんど面識がないと思ってた。
だって、俺のこいつは弟で
もし、俺と美夜がつき合っていたとしても
美夜は俺の彼女だったんだから………
こいつと、美夜は
仲良くなるはず…………ない、わけで……

