やっとあたしの方を見た悠雅は
無表情であたしにそう告げると勢いよく、あたしに近づいてきた。
あたしはその言葉と無表情の悠雅の顔に体が凍りついて動けなくなっていた。
そんなあたしを逃がさないためなのか悠雅はあたしがもたれている壁に手をつく。
そして片方の手であたしの垂れ下がっていた髪を耳にかけてきた悠雅。
「なぁ……なんできたの?」
耳元でそう呟かれて、耳にかかる悠雅の息に嫌でも体が震えてしまう。
そしてあたしは悠雅の問いに応えることが出来ない。
だって………だって何故か
体が動かないの。
声が出ないの。
頭の中が真っ白なの。
悠雅に話したいこと
言いたいこと、聞きたいことはたくさんあったはずなのに………
どうしてなのか
今まで見たことがない
悠雅の行動に、仕草に、声に、表情に………
怖くて怖くてたまらない。
「………。」
数秒たっても何も言わないあたしに愛想がつきたのか、悠雅はあたしの耳元から顔を離し見下して睨みつけるみたいにあたしのことを見た。
「海哉に聞いただろ」
「………………え?」
やっと自分の口から出た言葉は気が抜けてしまいそうなほど緩い声。
でもそんなこと気にしている余裕がなくて
ただただあたしのことを冷たく見下ろす悠雅の顔を見ることしか出来ない。

