いつかのMerry Xmas

「何番?」

聞いた私を無視して、勝手に自分で電話をかけはじめて――。

そのケータイ電話を私に渡してくれた。

――え?

「はい、こちら××タクシーです」

イチローに何か言う前に、電話の向こうから声が聞こえて、私は慌ててタクシー一台頼んだ。

心臓に悪いから、こういうの辞めてくれるかな。
電話を切った後に、そう思う。


潔癖症の彼は、基本的に何があっても自分のケータイ電話を他人に貸したりはしない。

「酔ってんの?」

ここは丁寧に電話を拭いて返したほうがいいのかしら、と、迷いながらそう聞くと

「見てわかるっしょ?
 素面に見える?」

なんて、呆れた返事をしながら、イチローは私の手から簡単に自分の電話をとりあげて、そのままポケットにしまいこんだ。