gently〜時間をおいかけて〜

ふと、航の顔に視線を向けた時、目尻の辺りに涙の後があることに気づいた。

「航?」

「何?」

「…泣いて、たの?」

あたしが聞くと、航は今気づいたと言うように指で目尻をぬぐった。

「ああ、さっきドラマを見てたからなんだ。

悲恋もののドラマなんだけど、最後の恋人が死んじゃうシーンでちょっと」

航はハハッと笑いながら、ポリポリと指先でこめかみをかいた。

「俺、こう言うものに弱くてさ。

涙もろい部分があるって言うか、なんて言うか」

笑いながら言った航に、
「あー、そう…」

あたしは呟くように返事をした。

何だ、ドラマか。