gently〜時間をおいかけて〜

「それじゃあ、今日はここまで」

待っていたかのように、あちこちからガタガタと椅子の引く音が聞こえた。

あたしは両腕を伸ばして、大あくびをした。

はーあ、疲れた疲れた。

でも午後にも1限あるんだよなあ。

もういっそのこと、休んじゃおうかな。

だけど航には3限もあることを言ったので、家に帰れる訳がない。

いきなり帰ってきたらビックリされるのがオチである。

「さっきは、教科書ありがとう」

その声と同時に視線を向けると、三島くんだった。

あたしは声を出して返事する代わりに、首を縦に振ってうなずいて答えた。