gently〜時間をおいかけて〜

確かにあたしは、航の母親だ。

当たり前のはずなのに、それを言うのをやめた。

「そりゃ、そうだよね?」

言いかけたあたしに、航が言った。

「莢は俺の母親なんだから」

チクリと、何故だか知らないけれど胸が痛んだ。

そうだよ、これが当たり前なんだよ。

いくら航が未来の世界からタイムスリップをしたとしても、母親はこのあたしだ。

時代が変わっても、動かない証拠だ。

あたしは航の母親で、航はあたしの息子だ。

それだけは、動かない事実である。