gently〜時間をおいかけて〜

「結構頼んだじゃん」

メニューを片づけながら、あたしは言った。

「だって、朝飯を食べてなかったから」

「…そうね」

何となく気まずくなったので、
「航って、料理できる方?」

あたしは話題を変えた。

「できない。

できたとしても、おにぎりくらい」

「じゃあ、1人で暮らす時は大変だね。

男でも料理はできなきゃ食べて行けないよ?」

そう言ったあたしに、航はまたクスクスと笑った。

「言ってることが母親」

そう言った航に、
「当たり前でしょ、あたしはあんたの…」

そこまで言いかけて、あたしはハッと我に返った。