gently〜時間をおいかけて〜

それにしても、すごい人だな。

お互いがどこにいるかわからなくなりそうだ。

そう思っていたら、グイッと腕が引っ張られた。

あたしの視界に胸の中が入った。

「航?」

彼の胸から顔をあげたあたしに、
「後少しでぶつかりそうだったよ」

遠くの方に視線を投げながら航が言った。

その顔を、変に意識したあたしは何なのだろうか?

航はあたしを助けただけである。

たったそれだけのことなんだから、うぬぼれるな。

航の胸の中で、あたしはそんなことを思った。