gently〜時間をおいかけて〜

そう言った航の表情は、とても寂しいものだった。

「世の中が便利になって行く中で、何かを失って行ってるような気がするんだ。

例えば自然とか人との交流とか…なんて言うか、そう言うものが周りから消えているような気がして仕方がないんだ」

冷たい北風が、あたしたちの頬をなでて行った。

あたしたちの心の中にまで、北風が入ってきそうだ。

「俺の時代には、もうこんな買い物をする場所なんてなくなってる」

目に焼きつけるように、航は目の前の建物を見つめた。

「どこへ行っても、街中は電波だらけ。

電波がない場所があるって言う方が間違ってる」

息を吐きながら、航は呟くように言った。