gently〜時間をおいかけて〜

航は首を横に振ると、
「莢が無事なら、それでよかった」
と、言った。

「別に…」

無理をしなくてもいいのに。

素直に寂しかったとか不安だったとかって言えばいいのに。

言葉の続きが言えなくて、あたしは残りを黙ることにする。

なんて弱虫なんだろう。

航を不安にさせない。

航を寂しがらせない。

そう誓ったくせに、すぐに続きが言えない。

「どっか行かない?」

言葉の続きを消すように、明るい声であたしは言った。

「えっ?」

そのことに驚いたと言うように、航は首を傾げた。