「――航…」

いなかった。

心当たりを全て探したけれど、航はどこにもいなかった。

航を探し回ったその足で、あたしは家に帰った。

リビングにつくと、ペタリと床のうえに座り込んだ。

「――航…」

視界がぼやけ始める。

1人になりたくなかった。

寂しい思いをしたくなかった。

でも結局、1人になってしまった。

そのせいで、寂しい思いをしている。

「――航…」

あたししかいない小さな部屋に響いたのは、航の名前を呼ぶあたしの泣き声だった。