いつも仕事ばかりの人間が、母親のことを思っていた。

頭の中は仕事でいっぱいのはずの父親が、母親のことを思っていた。

全く知らなかった事実に、俺は驚きを隠すことができなかった。

「なのに、俺は母さんにつらい思いをさせた。

過去も今も、俺は母さんに…だから、離婚を考えられても仕方なかったと思ってる」

そう言った父親に、
「――離婚…?」

俺は聞き返した。

父親は気づいていたのだろうか?

母さんが離婚の準備をしていたことに気づいていたのだろうか?

「たまたま仕事先の帰り道に、母さんが銀行に入って行くところを見たんだ。

通帳を見たら、毎月10万と別の講座に振り込まれてた」

そう思っていたら、父親が言った。