「――そう、ですけど…」

少し声が震えていたのは、相手が誰なのかわからないと言う恐怖からだった。

「えっと、どちら様でしょうか?」

そう聞いたあたしに、
「わたし、三島祐樹と一緒の店でバイトをしている風見と申します」

女は風見さんと名乗った。

一緒の店でバイト…三島くん、バイトをやってたんだ。

そんなことを彼の口から聞かされていなかったから、あたしは少し驚いてしまった。

けどそれよりも、
「どうして、あたしの番号と名前を?」

あたしは風見さんに聞いた。

知らない――ましてや会ったこともなければ顔も見たことがない彼女が、どうしてあたしのことを知っているのだろうか?

そもそも、何の用であたしに電話をかけてきたのだろうか?