莢――母親が倒れた。

救急車に乗って、病院へと運ばれた。

俺の聞き間違えだったら、どんなにいいことなのだろうか?

夢だったら、どんなに嬉しい事なのだろうか?

けれど、たった今俺が聞いたそれらのことは全て事実である。

「――莢…!」

今は、莢のいる病院に行かなければならない。

急いで、莢の顔を見ないといけない。

莢は無事なのか。

莢は生きているのか。

滑り落ちた携帯電話を拾うと、ヨロヨロとふらつく躰をこらえながら床から立ちあがった。

やっと外に出た時、俺の躰は疲労感でいっぱいだった。

携帯電話を動かすと、俺は心の中で思った。

時間よ、進め。

俺の生きている時代へ。

未来へ。