その場に耐えることができなくて、俺は逃げ出した。

レポートを届けにきたと言う目的なんて、もう忘れていた。

ただ耐えることができなくて、とにかく逃げたかった。

莢はいつから、彼と話し始めたのだろうか?

先に話しかけたのは、一体どちらなのだろうか?

そんな疑問が渦巻いたけど、俺は全て無視することにした。


床に尻をつけたとたん、やってきたのは冷たさだった。

このまま凍死することができたら、どんなに楽なことなのだろうか。

さっきの出来事をこのまま忘れることができたら、どんなに楽なことなのだろうか。

そんなことを思っていたら、ダウンジャケットのポケットに入れていた携帯電話が鳴り出した。

莢からだろうか?

ディスプレイを見ると、表示されていたのは友人の名前だった。