「 花さん 」
中庭の、ど真ん中に突っ立って
この学校一番の
枝垂れ桜を眺めている
冬の着膨れを抜け出して、
ちょっと痩せて来た花さんに声をかけた
「 空哉くん おはよう 」
「 もう昼だから
… 花さん、珍しく今日
来るの遅かったな 」
「 うん
陽気の変わり目だからね〜
空哉くんも体調気をつけなね
今、学校でも風邪流行ってるし 」
「 花さん おにぎり食う? 」
「 えっ 食う食う! 」
「 お〜い!何やってんだよ
そんな所で二人さみしく
皆ロケ見に走って必死なのに 」
「 那智 」
「 那智くん、お弁当一緒に食べよ〜! 」
「 お! 待って! いくいく 」
三階の窓から覗いていた那智が
そのまま窓を閉める
「 あ! 花さんだ!!
お弁当食べるとこ〜? 」
「 うん! 一緒に皆も食べよう! 」
渡り廊下を歩いていたクラスの女子が
うるさい位にはしゃぎながら
花さんとオレが座っていた芝生周りに集まる
「 皆は、ロケみなくていいの?
なんか小澤亮がいるとか
さっき聞いたわよ? 」


